Vol.7 株式会社ニッポン放送
FMH “拡がる” Inside Story
前島花音(アナウンサー)
熊谷実帆(アナウンサー)
「今」を取り込みラジオの向こうへ
SNSや動画サイトが発達し、膨大な情報が人々の耳目を集める時代。音声のみを届け、リスナーと「近くて深い関係」が築けるメディアであるラジオの存在が改めて注目されている。ニッポン放送は、街頭生中継やイベントなど、リスナーとの一体感にこだわった番組制作で「街の今」を届け、そして番組を超えた「つながり」の強化を図っている。フジ・メディア・ホールディングス(FMH)の一員として、目指すのは「喜びやつながりを実感できる社会づくり」だ。
昔ながらの街頭生中継にこだわり
「つながり」や「喜び」。FMHの掲げるグループ方針を体現するようなコーナーがある。「あなたにハッピー届けたい!」。フリーアナウンサーの垣花正氏がパーソナリティを務める朝の人気情報番組『垣花正 あなたとハッピー!』(月~木曜、午前8時~11時)内の街頭生中継コーナーだ。毎回、垣花氏が担当の前島花音アナウンサーに「まえじまーぃ」と呼びかける声で始まる。

商店街から生中継を行う前島花音アナウンサー
コーナーは2023年10月にスタートした。前島アナが関東近郊の商店街を訪れ、商店街の会長や店主から、さまざまな話を聞き出す。
前島アナは生中継現場でのハプニングも含め、情景をありありと伝える。それをスタジオの垣花氏やアシスタントの那須恵理子氏、熊谷実帆アナが面白がり、話題が広がる。そんなかけあいが評判を呼び、同コーナーは看板コンテンツの一つとなっている。
商店街を舞台に選んだ理由について、前田名奈プロデューサーは「今も変わらず元気な商店街は多い。その活気や人々のつながりをラジオで応援し、みなさんに伝えたかった」と話す。
生中継を行うと、SNSで話題となったり、取り上げた店を訪れる人が増えたりと、「生中継コーナーで終わらず、商店街自体の盛り上がりにつながる」という。番組で紹介し、そしてその先では番組を超えて人々がつながる。

プロデューサー 前田名奈
2020年から担当している前田氏は番組について「どこを切っても笑い声が聞こえる。『おもしろ楽しく朝に知りたい情報をお届けする』がコンセプト」と表現する。ニュースが中心だが、ただ伝えるだけでなく「そのニュースが『リスナーの暮らしにどう影響するか』まで落とし込んで伝えるようにしている」と胸を張る。
インターネット上には人々の不安をあおるような真偽のあいまいな情報が大量に飛び交うが、「いろいろな情報がスマホから飛び込んで来て、好きな情報しか入ってこない時代。ラジオは耳さえ傾ければ、知らないことや興味がなかったことも教えてくれる。信頼を大事にしたい」という。
国内初のラジオ放送開始から100年以上が経過し、ラジオを取り巻く環境も様変わりした。一時期は1人で楽しむメディアだったが、いまではリスナーがSNSに感想を書き合い、大勢で楽しめるメディアに進化。さらに番組のインターネット配信サービス「radiko(ラジコ)」の登場で、いつでもどこでもラジオが聴ける時代となり、確かな情報を届けやすくなった。
そうした中、なぜ街頭生中継という昔ながらの手法にこだわるのか。
前田氏は「『動いている今』が伝えられるのは、やっぱり街頭生中継」と強調する。
外の気温、商店街のたたずまい、準備に追われる飲食店からただようにおい―。「そういったものをアナウンサーが臨場感をもって伝えることで、番組に彩りが生まれる。今どこかで頑張っている人たちの様子を伝えたい」
ニッポン放送が「オールナイトニッポン」のリスナーと集うイベントなどを精力的に行っているのも、「今」を放送に取り込み、番組の枠を超えてリスナーとつながることが目的だ。
「あなたとハッピー!」も番組の15周年を記念し、23年に東京国際フォーラム(東京都千代田区)で、リスナーら4000人と「大感謝祭」を開催した。当日はゲストを招き、大観衆を前に番組収録を行った。レギュラーだった森永卓郎氏が仮装して歌を披露すると、客席から笑い声や突っ込みの声が沸き起こった。
前田氏は振り返る。「普段は顔を見ることができないリスナー4000人と同じ空間で一緒に過ごす時間は感激だった。出演者もリスナーも、ラジオというメディアを飛び越えていた」と。そこでは、ラジオ番組を超えて、同じ気持ちの人々がつながっていた。
リスナーとつながり「可能性は無限」

アナウンサー 前島花音
「垣花正 あなたとハッピー!」の生中継コーナー「あなたにハッピー届けたい!」を担当する前島花音アナウンサーは、街頭生中継の魅力について「ラジオを通じて、商店街の人やスタジオ、リスナーのみんながつながっている、縁が広がっていることを感じさせてくれるところ」と語る。
生中継にトラブルは絶えない。店のスタッフが商品名の由来を度忘れし、恥ずかしさから奥に引っ込んでしまった。電話が鳴って店主が応対を始めた。おとなしかった犬が突如猛烈にほえ出す―。「最初は『どうにかしなきゃ』とあせっていた」と前島アナ。「でも、次第に私がトラブルを楽しめばいい、リスナーにそこに一緒にいるかのように感じてもらえばいい、と気づいた」と笑う。
「良いところを列挙しても魅力は伝わらない」として、雑談のようなざっくばらんな会話を心掛ける。前島アナと商店街の人々、スタジオの垣花氏とアシスタントの熊谷実帆アナ、そしてリスナーの全員が「まるで丸テーブルを囲み、雑談しているみたいな雰囲気」でつながりあうことを目指しているという。

アナウンサー 熊谷実帆
熊谷アナ自身も同番組内で「熊谷実帆の行ってミホ!やってミホ!」という街頭取材コーナーを担当。「番組に〝外の空気〟を入れるのはとても大事」と強調する。
出かける場所はリスナーのリクエストから選ぶ。話題のスポットや観光地のほか、乗馬体験、熱気球搭乗、うどん作り、忍者体験などマイク片手に体当たり取材を行う。「紹介した場所に実際に出かけました!」というリスナーも多いという。
気を付けているのは「五感の描写」だ。「見た感じ、触った感じ、におい、味の表現が大事。視覚障害の方もたくさん聴いているので、そういう方にも伝わるように心掛けている」という。
ラジオというメディアを2人はどう考えているのだろう。
前島アナは「映像がないからこそ、リスナーとの距離が近く、深くつながれるメディア」と分析。熊谷アナは「ラジオではリスナーのメール一通が番組を動かす。まるで出演者の一人のよう。推し活文化みたいに、『自分が聴かないと番組が始まらない』と思ってほしい」と語る。
将来、メディアの環境がさらに変化していこうとも、リスナーとの絆でつながる「ラジオの可能性は無限」と声をそろえた。
「ファンづくり」のノウハウ にぎわい創出にも一役
ニッポン放送は、リスナーが番組をリアルで体感できる大型イベントを続々と開催している。開局から70年以上にわたり培ってきた「ファンづくり」のノウハウを生かし、観光地のにぎわい創出にも乗り出した。
昨年7月13日、三浦海岸(神奈川県三浦市)に設営されたステージに笑福亭鶴光さんが登場すると、昼下がりの砂浜は大歓声に包まれた。リスナー感謝イベントとして行われた5時間に及ぶ公開生放送の終盤戦。鶴光さんやアナウンサーらが番組から生まれたオリジナル曲(音頭)をリスナーと一緒に歌って踊ると、海岸はニッポン放送一色に染まった。

公開生放送が行われた三浦海岸には多くのリスナーが集まった
公開生放送は、ニッポン放送が三浦市と連携し、年間を通じて三浦海岸をプロデュースする「MIURA FUN BEACH三浦海岸」プロジェクトの一環として行われた。
かつて100万人を超える来場者でにぎわった三浦海岸だが、新型コロナ禍後の2023年には約8万人に激減。24年には「海の家」の出店希望が1件もなく、地元に危機感が広がっていた。
盛り上げ役を買って出たのがニッポン放送だった。15、16年にライブステージを備えた「海の家」の運営に携わった経験が縁となり、三浦市から全面プロデュースを受託。「地元の人がワクワクすること」「訪れる人が忘れられない体験をすること」「もう一度訪れたい場所となること」をコンセプトに、海を眺めながら行う「ビーチヨガ」や砂浜での映画上映、アーティストのライブなどを展開している。
1万人のファン沸かす
昨年10月には、オールナイトニッポンでパーソナリティを務める俳優の山田裕貴さんの番組イベント「ドラゴンフェニックス甲子園」を横浜アリーナ(横浜市港北区)で開催。冒頭、山田さんが首にギプスを着け、足に包帯を巻いた姿で登場し、1万人の観客を沸かせた。
ラジオを聴いている人になじみのある話題で盛り上がり、番組を身近に感じられるのがラジオの番組イベントの醍醐味。直前の番組内で「声出し合宿中に喉を疲労骨折した」というネタで盛り上がったことを受けての登場で、一気に観客を引き付けた。

ギプス姿で現れた山田裕貴さん
俳優の赤楚衛二さんら多彩なゲストも登場し、一夜限りの豪華コラボレーションライブなどでリスナーを魅了した。
ニッポン放送では今後もラジオ番組という枠にとらわれず、リスナーとのつながりを大切にしたイベントを展開していく。
(本記事は2026年3月13日時点の内容です)